ここは八幡坂。
まっすぐのぼると諏訪大社下社秋宮。
なんとなーくこの道が中山道のような気がしますが、実はこっち。
高札場に向って左へ。
こっちが中山道です。下諏訪は中山道六十三宿のうち、唯一温泉の湧く宿場町。
実は街なかにも点々と、いくつもの温泉スポットがあるのです。
地元の立町(たつまち)のみなさんが町の入り口に通年で提灯を架けています。
お祭りのあるときはカラフルに彩色された特別な提灯に架け替えます。
と、まずは民家の前に手水鉢…と思いきや。
あっつ!
これは温泉だった…
あ、「御神湯」と札が出ていますね。
立町は街道らしい風情を守ろうと、街道沿いの家や旅館の前に温泉を設けています。
床屋さんの前にもひとつ。
木製のものもあります。
そして儀像堂には足湯。
古き良きまちなみを眺めつつ、足を浸してしばし休憩。
(上流が熱め、下流がぬるめです。お好みに合わせて座る位置をお選びくださいまし。)
むむむん、と足指も伸びちゃいます。
点在する湯鉢を追っていくと、T字路に。
中山道はここから北へ折れて和田峠を越え江戸へ。
南へ向かう道は甲州街道。
実はここはふたつの街道の合流点であるとともに、「綿の湯(わたのゆ)」という由緒ある温泉共同浴場でもあった場所です。
むかしむかし、諏訪湖の南岸で暮らしていた諏訪の神さまご夫婦がちょっとしたケンカをして、お怒りになった女神さまが下諏訪にお移りなったときに、お化粧用に愛用していた温泉を綿に含ませてお持ちになった湯がここに湧いているという伝説があります。
「綿の湯」は「児湯(こゆ)」との合併のため昭和62年に閉湯。しかし源泉は変わらずここにあり、町内の家庭や旅館、共同湯へ地下の温泉管を経由して配湯されています。
その源湯はこの建物の中。
すぐ横のモニュメントには今もかぷかぷと温泉を流しています。
あちち。
今見てきた立町から、ちょっと秋宮に寄り道を。
新鶴さんの前を抜ける道が甲州街道。
秋宮の生い茂る社叢をくぐって境内へ。
なんと…実はここにも…。
手水と並んで、真冬ともなればもうもうと湯気を上げる、世にも珍しい温泉のお手水はこちら。
…熱いんです、ハンパなく。
ものの本によると、このお湯の落ちる鉢のくぼみは諏訪湖になぞらえているとのこと。
いやあ、深いねえ。
下諏訪といえば温泉共同湯が安くて熱くて有名。
秋宮界隈に3つ、町内全体では9つの温泉共同湯があります。
大人ひとり、概ね230~250円(ゆたんぽだけ400円)。
立ち寄りする旅行者だけでなく、日常的に、つまり、浴室がわりに地元民が毎日通います。
児湯
旦過の湯
「こんばんは」
「やあだ、久しぶりじゃぁ、どういう?(えー、久しぶり!どうしてた?)」
「ねえ、これ持ってかない?(あげるわよ、の意)」
(と、突如脱衣所で始まる自家製漬物や農産物の交換会)
「お先に失礼しますー」
「ハーイ、ごめんくださーい」
と、交流の場(時にはまちのアレコレな情報交換も…)としても、この温泉共同浴場は地域密着。
「やっぱここのお湯が一番だわ」
「おかげさまで元気でいられて。温泉のおかげ。」
町民は行きつけの温泉共同浴場にLOVEなのです。
旦過の湯の駐車場入り口には、壁に突如として蛇口。
なんだろうと様子を見ていると、ポリタンクを下げた人が近寄ってきます。
蛇口をひねって…ポリタンクに汲んでいるのは…温泉!
旦過の湯はすぐ近くに源泉があり、そこからこのあっちっちな温泉はやってきます。
誰でも汲んでいってOK。(※ただし、節度をおまもりください)
自宅のお風呂に足す人、お掃除や洗い物に使う人、冬は湯たんぽに入れたりとなにかと重宝する温泉。
残念ながら飲用には適しませんので…この点だけは悪しからず。
こんな汲み湯は、こんなところにまでありまして…
神社の石垣から湧水と隣り合う温泉。
中山道を散策する旅人や近所のひとまで、何とも利用者層の広い汲み湯です。
旅する人が「あっちい!」と驚く姿をにまにま眺めるのもまた楽しい。
サテ、この先中山道は少し坂を上って、慈雲寺の前を通り諏訪大社春宮近くへ。
ワタシはこの辺で失礼します。
そうそう、すぐ近くに「伏見屋邸」っていう江戸時代の商家の建物があって、休憩ができます。
コアな地元民が「あがってって」と誘ってくれるから、これを断るテはないよ。
伏見屋邸
行ってらっしゃーい!
みなさま、引き続きよいしもすわの旅を。