諏訪湖の周りには、たくさんの美術館や博物館があります。全国でも有数の集積地なのだそう。下諏訪にあるのは「ハーモ美術館」。ここには、中学校の美術の教科書にも載っていそうな有名画家の作品が、いくつも展示されているんですよ。
ハーモ美術館までは、下諏訪駅から徒歩20分くらいですが、ここはぜひとも自転車に乗っていきましょう。下諏訪町はもちろん、両隣の岡谷市や諏訪市も含め、諏訪湖湖周はサイクリングロードが整備されており、とても快適に走れるのです(美術館と自転車のいい関係が作れそう)。
下諏訪駅の改札を降り、駅を背にして突き当たりの国道20号線までまっすぐ行くと、目の前に「れんたさいくる」(レンタル自転車)があります。1台につき1時間100円で借りられます。
自転車を借りたら、下諏訪駅方面へ。駅の手前を右に曲がり、産業用ロボットやモータ、オルゴールなどを作っている日本電産サンキョーさんを右手に見ながら進みます。敷地の中ほどで建物の壁を見てみましょう。躍動するスケート選手が描かれています。こちらには加藤条治さんらオリンピックで活躍する選手が多数所属しているのです。そのまま郵便局を右手に見ながら左折、踏切を渡って「鷹野町商店街」に向かいます。ここはかつて、駅から下諏訪町役場に続く唯一の通りだったので、いろんなお店がひしめくにぎやか商店街だったようです。
日本電産サンキョーさんはオリンピック選手も育成
踏切から少し行った右手の自転車屋さんに寄ってみましょう! 自転車を借りたのに、自転車屋さんとはこれいかに? サイクリスト マツザワさんは今年3月にリニューアルオープンしたばかり。いろんな世代のお客様に立ち寄っていただきたいと思いを込めた明るくおしゃれな店内には常時400台が並びます。ここで世界最古の自転車ブランド、イタリアの「BIANCHI(ビアンキ)」を発見! マツザワさんは、日本でも10数件しかない限定品のフラッグシップモデルの展示、販売などを行うレパルトコルサストアなのです!! もちろん県内では唯一。 さすがファッションの国、自転車もおしゃれ。さらにこのビアンキがレンタルできるんです!!! 諏訪地方6市町村によるサイクリングスポットの充実と、外国人を含めた観光客の呼び込みを目指す事業の一環で、マツザワさんも9月から自転車レンタルを開始。伝統あるチェレステ(イタリア語で天空)色の風になりたい方はマツザワさんに気軽に立ち寄ってみましょう。
自転車の英語スペルと自転車の形を組み合わせたロゴがかわいい
子供から大人、外国人まで幅広いお客さんが入りやすい雰囲気の店内
二代目店主の優しい松澤平吉さんがメンテしていたのが「BIANCHI(ビアンキ)」
サイクリスト マツザワ
住所 長野県諏訪郡下諏訪町東鷹野町4919
営業時間 10:00-20:00
定休日 水曜日
電話番号 0266-27-7736
駐車場 10台
レンタル 車種によって料金は違います
駐車場 店舗前と少し離れたところにあり
http://cyclist-bikes.com/
サイクリスト マツザワさんの少し先、左手にある落ち着いた風情ある店構えの和菓子屋「美土里屋」さんで、おやつをゲットしましょうか。こちらがユニークなのは、元洋菓子店だったこと。店の内装もそれに合わせてリニューアルしたそうですが、手がけたのは、知る人ぞ知る国内外の日本庭園を担当されている作庭家、小口基實さん。美土里屋さんでは人気の三種を購入。「万治の石仏」の顔のざらざらをうまーく表現した「ごま味噌まんじゅう 万治くん」(地元のひかり味噌を使っているそう)、丹波の黒豆のつぶが口の中でコロコロするのが印象的な「丹波黒」、チーズクリームをはさんだブッセふうの「しあわせ」。どれも品のよい、控えめな甘さなので、ついつい手が伸びてしまいます。
洋菓子店から和菓子店になったときに改装した店舗はいい雰囲気
「季節に合わせてお菓子が変わるので、いつ来ていただいても楽しいですよ」と店主の宮澤英明さん
「しあわせ」135円、「丹波黒」175円、「万治くん」一個98円 ※税別
御菓子司 美土里屋
住所 諏訪郡下諏訪町西鷹野町4917
営業時間 9:00-19:00
定休日 月曜日
電話番号 0266-27-9128
駐車場 2台 店舗前の道路、反対側にあり
https://www.facebook.com/okashiji.midoriya/
イタリア製の自転車、手作り和菓子に味わいある店構えなど小さなアートを愛でたところでハーモ美術館へ! 目の前に見える役場前交差点を左折、ハルピンラーメン、野球場などを眺めながら広い通りをスイーっと走り、赤砂の信号を超えると下諏訪の名物とも言える艇庫が見えてきます。そちらにはいかず湖畔を左折してください。少し行ったところにハーモ美術館はあります。
下諏訪艇庫。ここを拠点に地域の中学、高校、社会人までボートが盛んです。
湖畔では、こんなのんびりした風景も。
まさに銀鱗の水面をスイーと進む、あめんぼのようなボート。
ハーモ美術館
ハーモ美術館が開館した1990年4月。若いころ店舗を持たない“風呂敷画商”をしていた茅野市出身の関たか子館長が、ギャラリーを持とうと考えていたところ、話が膨らんで実現した美術館です。中へ入ると、いきなりサルバドール・ダリのブロンズ作品「時のプロフィール」が出迎えてくれるから驚きです。ダリはスペインのシュールレアリスト。ねじれた空間、ゆがんだ時計が描かれた、だまし絵的な作品は見覚えがあるでしょう ? それらはダリ自身の心の風景や、夢、妄想、強迫観念を描いたもの。そして世界で7体ある「時のプロフィール」の一つがここにあるんです。
世界で7体しかないダリの『時のプロフィール』。
よく見ると、時計が顔にも見えます。
作品にはナンバーリングがされています。
階段を上がって2階に上がります。常設展示されているのはパントル・ナイーフ(素朴派)と言呼ばれる画家の作品たち。特に有名なのがアンリー・ルソーですが、評価のわりに手がけた作品が極めて少ないその作品がここに8点もあるのは特筆モノです。目の前には、まるで巨大なキャンパスのような窓。晴れていれば遠くに富士山も見えます。緑にあふれた絵画の世界と、諏訪の街がつながっているかのように感じます。
2階のフロアから見える風景。提供:ハーモ美術館
緑豊かな素朴派の絵画が並んでいます。提供:ハーモ美術館
そしてまたもやダリの前で足が止まりました。絵本の挿絵として描かれた「不思議の国のアリス」のリトグラフが13枚も並んでいます。ちなみに絵本そのものはダリが1969年に限定2500部を署名入りで出版したそうです。なんと270万円以上するとか。さすがにアマゾンにも出品されていません(苦笑)。
シュールレアリズムの巨匠サルバドール・ダリ
http://matome.naver.jp/odai/2136015389773201901
関館長は時間のある限り来館者を迎えておもてなし。
なかなかすごいでしょ! それもこれも関館長が集めたものです。その関館長は「夢から生まれた美術館の物語」(日経BPコンサルティング)という自伝を出版されました。関館長の思いが詰まったハーモ美術館は、家庭的な雰囲気で、スタッフもとても丁寧に接してくれます。カフェでは地元のお客さんが関館長と談笑しています。ここは気軽に館長に会える美術館。システマチックな都会の大美術館にはない温かさがあります。
ハーモ美術館
住所 諏訪郡下諏訪町10616-540
営業時間 9:00~18:00(10~3月は9:00~17:00)
定休日 なし
電話番号 0266-28-3636
入場料 大人1,000円、小中高校生500円(毎週土曜日は無料)※但し特別展は除く
駐車場 美術館東隣の「みずべ公園駐車場」をご利用ください
http://www.harmo-museum.jp/
いまいこういち(『engawa』)
フリー編集者
大学では油絵を学んだのに、日刊文化通信に就職し、放送業界の取材となる。その後、シアターガイド編集部にて16年過ごし、まつもと市民芸術館広報担当をへて、今は地元でフリーの編集者、ライターとして活動。演劇を軸にしつつも、クラフト工芸、アート、町工場、農業まで幅広く「つくる人・現場」を取材。また、長野県の文化・芸術に関する情報を収集、発信をするサイト NaganoArt+の編集長をつとめる。http://naganoart-plus.net/